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2012年5月19日 (土)

「日本の淡水魚類」 岡田彌一郎,中村守純 共著 日本出版社 昭和23年 その2

緒言
 日本に於ける淡水魚の研究は、魚學と産業の上から緊要な事であるから、著者等は拾數年前から、之に着手した。幸ひ昭和十九年頃には、其大要を研究し終つたので、當時本書肆主脇坂要太郎氏の慫慂により、之れが出版を計畫し、・・・・二百頁程進捗した。然るに昭和二十年三月十三日、大阪の大空襲によりその總てを失ひ、・・・・然し從來に增す成果を収めるには未だ數年を要する。
 ・・・・専門的に偏することなく、淡水魚の一般的知識普及と云う意味で、此の書を上梓した。・・・・幸い本書が、日本の淡水魚研究の進展に多少なりとも貢献されるならば、著者等の感謝は此の上もない。
 終りに臨み・・・・滋賀縣・岐阜縣の兩水産試驗場を始め各地の水産關係者の御援助・・・・    。
 ・・・・尚ほ本圖に就て坂本貫一畫伯の勞を謝し度い。

    昭和二十三年七月    著者等識す

1 總論
 A 形態 23ページ
  a 外部形態
   眼、鼻孔、耳、口、鱗、鰭、鰭式、側線について図版を多く配し詳しい説明。

  b 内部形態
   消化管、生殖器、泌尿器、血管系、神經系、筋肉系について詳細に説明。

 

B 分類

   ジョルダン博士の分類法を基礎とした。
   術語解説 8ページ
   綱、目、科、屬の分類 4ページ
    2綱、1亞綱、3目、10亞目、29科、76屬

   上記の分類毎に特徴を解説 41ページ
 C 進化 7ページ 省略
 D 分布 7ページ
  生態的分布
  地理的分布
   Berg.L.Sの区分と森爲三博士の区分を紹介

 

E 生殖 10ページ

  1、雌雄性
   婚姻色ほか6点を説明。それぞれに代表種と参考文献を紹介している。

  2、産卵期
   中村秀也氏の調査表による
   魚種毎に産卵月と観察地名を掲載。
   同一種でも地方での違いも表記している。

  3、産卵數
   滋賀県水産試験場長 川端重五郎氏の著書を基にした。
    琵琶湖産魚介類 1931
   種名毎に大きさ(尺)による産卵数を記載

  4、卵生
   粘着性卵と沈性卵の魚種を掲載。

  5、雌雄同體
   報告されているマス、メダカ、ニジマス、イチモンジタナゴについて
   解説。
   イチモンジタナゴについては、特徴まで書かれている。

  6、特殊な産卵習性
   保護する、しない、巣を作る、二枚貝に産卵、卵胎生の話。

 

F 食性 4ページ

  「従來の研究に於いても完全な域に達していない」
  サケ科、ナマズ科、ギギ科、コイ科、ドジョウ科、ウナギ科について解説
  引用文献多数掲載

 

G 漁法及漁具の變遷 15ページ

  山口和男氏の「日本漁業史」に骨子とした。
  原始時代、古代、中生代、近世代、現代に分け説明。
  漁具
   曳網類、建網類、掩網類、
 H 增殖 7ページ
  增殖の意義とその類別
  1、消極的方法(蕃殖保護)
   a,魚類自身を對象とするもの
    漁業法、県の規制、魚組の申合せの話
   b,環境を對象とするもの

  2、積極的方法
   a,魚類自身を對象とするもの
    コイ、フナ、アユ、マス、ワカサギについて解説。
   b,環境を對象とするもの

 

I 採集と飼育 7ページ

   淡水魚の採集と飼育
   採集
    野帳の記入例、釣、ビンド(琵琶湖ではビンモジ)、
    投網(打網)、抄手網・押網、曳網、手タモ、かいぼりの説明
   飼育
    採集地から持歸るまで 籠瓶のはなし
    持歸ってから飼育槽に移すまで
     注意点を記述
     飼育槽
     換水と給餌
     産卵
     標本の製作 フォルマリン漬の方法を解説、ラベルの例

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