「日本の淡水魚類」 岡田彌一郎,中村守純 共著 日本出版社 昭和23年 その2
緒言
日本に於ける淡水魚の研究は、魚學と産業の上から緊要な事であるから、著者等は拾數年前から、之に着手した。幸ひ昭和十九年頃には、其大要を研究し終つたので、當時本書肆主脇坂要太郎氏の慫慂により、之れが出版を計畫し、・・・・二百頁程進捗した。然るに昭和二十年三月十三日、大阪の大空襲によりその總てを失ひ、・・・・然し從來に增す成果を収めるには未だ數年を要する。
・・・・専門的に偏することなく、淡水魚の一般的知識普及と云う意味で、此の書を上梓した。・・・・幸い本書が、日本の淡水魚研究の進展に多少なりとも貢献されるならば、著者等の感謝は此の上もない。
終りに臨み・・・・滋賀縣・岐阜縣の兩水産試驗場を始め各地の水産關係者の御援助・・・・ 。
・・・・尚ほ本圖に就て坂本貫一畫伯の勞を謝し度い。
昭和二十三年七月 著者等識す
1 總論
A 形態 23ページ
a 外部形態
眼、鼻孔、耳、口、鱗、鰭、鰭式、側線について図版を多く配し詳しい説明。
b 内部形態
消化管、生殖器、泌尿器、血管系、神經系、筋肉系について詳細に説明。
B 分類
ジョルダン博士の分類法を基礎とした。
術語解説 8ページ
綱、目、科、屬の分類 4ページ
2綱、1亞綱、3目、10亞目、29科、76屬
上記の分類毎に特徴を解説 41ページ
C 進化 7ページ 省略
D 分布 7ページ
生態的分布
地理的分布
Berg.L.Sの区分と森爲三博士の区分を紹介
E 生殖 10ページ
1、雌雄性
婚姻色ほか6点を説明。それぞれに代表種と参考文献を紹介している。
2、産卵期
中村秀也氏の調査表による
魚種毎に産卵月と観察地名を掲載。
同一種でも地方での違いも表記している。
3、産卵數
滋賀県水産試験場長 川端重五郎氏の著書を基にした。
琵琶湖産魚介類 1931
種名毎に大きさ(尺)による産卵数を記載
4、卵生
粘着性卵と沈性卵の魚種を掲載。
5、雌雄同體
報告されているマス、メダカ、ニジマス、イチモンジタナゴについて
解説。
イチモンジタナゴについては、特徴まで書かれている。
6、特殊な産卵習性
保護する、しない、巣を作る、二枚貝に産卵、卵胎生の話。
F 食性 4ページ
「従來の研究に於いても完全な域に達していない」
サケ科、ナマズ科、ギギ科、コイ科、ドジョウ科、ウナギ科について解説
引用文献多数掲載
G 漁法及漁具の變遷 15ページ
山口和男氏の「日本漁業史」に骨子とした。
原始時代、古代、中生代、近世代、現代に分け説明。
漁具
曳網類、建網類、掩網類、
H 增殖 7ページ
增殖の意義とその類別
1、消極的方法(蕃殖保護)
a,魚類自身を對象とするもの
漁業法、県の規制、魚組の申合せの話
b,環境を對象とするもの
2、積極的方法
a,魚類自身を對象とするもの
コイ、フナ、アユ、マス、ワカサギについて解説。
b,環境を對象とするもの
I 採集と飼育 7ページ
淡水魚の採集と飼育
採集
野帳の記入例、釣、ビンド(琵琶湖ではビンモジ)、
投網(打網)、抄手網・押網、曳網、手タモ、かいぼりの説明
飼育
採集地から持歸るまで 籠瓶のはなし
持歸ってから飼育槽に移すまで
注意点を記述
飼育槽
換水と給餌
産卵
標本の製作 フォルマリン漬の方法を解説、ラベルの例
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