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2010年2月21日 (日)

「金魚」 松井佳一 河出書房 昭和16年 その2


 私は六年前の昭和十年六月に當時迄二十二年間の研究を取り纏めた科學と趣味から見た金魚の研究を上梓して、その翌年四月に飼育法のみを詳述した實驗金魚の愛玩と飼育法を上梓した。

 ・・・・・

 金魚の飼育は私の生活の一部であり又趣味であって其後も常に研究と蒐集とを續けて居る、これは恐らく私の終生の仕事の一つであらう、・・・・・。

 ・・・・・本書は前著改訂の暫定版とも云ふ可きものであるが紙數の關係で詳細な點は重複をさけることとした。

 ・・・・・

   昭和十六年二月二十日第五十回誕生日
     欣魚荘文庫にて 松井佳一 識

---ここから本文---

一,金魚の起源
 其の出現は 葛洪著 抱朴子
         張華撰 博物志

 飼育は 李時珍著 本草綱目
      陳淏子著 秘傳花鏡
      蒋廷錫等編 古今圖集成

 

1,金魚の祖先
  学名について縷々書かれている。
  金魚と鮒との類縁について
   石原誠及び操担道両氏の血清の沈殿反応による研究
   牧野佐二博士の染色体の研究
   故外山亀太郎博士を引き継いだ交雜の實驗

・・・・・金魚の原型は鮒であることは疑ひの餘地のない程であって、鮒が「ひぶな」に赤變し開き尾となったものが原始的の金魚で、それが日本でいふ「わきん」であることが證明出来る・・・・

 

2,日本の金魚の始
  和事始六巻 貝原好古 天和三年(1683年)
  金魚養玩草 安達喜之 寛延元年(1748年)
  廣大和本草八巻 直海龍撰 寶暦九年(1759年)
  金魚名類考 觀魚亭 寛政八年(1796年)
  俗事百工起原巻之中 宮川政運 慶應元年(1865年)
  十三朝記聞 源照矩編 文久二年(1862年)
  多識篇 林道春 慶長十七年(1612年)

  以上の文献を解説し

「・・・・・金魚の最初の傳来を文亀二年とすることに賛成する。」と記している。

  「朝鮮金魚」と「らんちう」については以下の文献を解説。
   金魚秘決録 金魚養玩草の後篇 寛延二年刊
   只增訂武江年表 朝倉無聲 大正十四年(1925年)
   西鶴置土産巻二 元禄六年(1693年)

  金魚が日本で出現したとする妄説を以下の文献で解説
   江源武鑑第十七 佐々木氏郷 明暦二年(1656年)
   大和郡山金魚育養の方法 古川松柏 明治二十三年
     大日本水産會報告第九十八號
   長崎見聞録 廣川獅著 寛政十二年(1800年)
   坂部甚五郎の道中記及び裏見寒話 宝暦二年(1852年)
   大阪府誌 明治三十六年

  米國への傳来について前著(明治十年とした)の訂正をしている
   明治九年四月二十七日發行の朝野新聞を引用

 著者が所有している文献を多数紹介

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