「金魚」 松井佳一 河出書房 昭和16年 その4
三,金魚の種類
・・・・・苟も品種といふ以上はそれと同様のものを計畫的に次代に繁殖せしめる得るもの思ふ、従って遺傳しない形質を特徴とするものは其の品種といふことは出來ない、私はこの意味で金魚の品種を記述するものである。・・・・・
(1)支那から傳來の明白な品種
- わきん、らんちう(卵蟲)、りうきん、でめきん、ちゃうてんがん
(2)日本で出來た品種
1)原型から分離淘汰したもの
- ぢきん、なんきん、とさきん、てつをなが、おほさからんちう、やまがたきんぎょ、つがるにしき
2)交雜によって作ったことの明白なもの
- わとうない、きんらんし、しゅぶんきん、しうきん、キャリコ、ひろにしき、あずまにしき
(3)由來の不明瞭なもの
- おらんだししがしら
1,わきん(和金、和錦)、やまと
- 昭和二年春普通鱗の「わきん」から突然變種として網透明鱗性のものを得て繁殖さした・・・・
2,りうきん(琉金、琉錦)、をなが、ながさき
3,らんちう(卵蟲、金)、丸っこ、てうせん(郡山)、朝鮮金魚
多くのページ割いている。
a,らんちう(金(魚壽)、蘭(魚壽))
- 豊橋市の金魚屋 戸田善次郎翁、弟の岡崎在の杉田久五郎翁の話
三河國横須賀の岡山に「おかやまらん」
名古屋に「しみづらん」
b,おほさからんちう(大阪蘭(魚壽))
c,なんきん
4,でめきん(出目金、出目錦)、支那金、支那金魚
明治28年以降に普及した理由を文献を元に解説。
a,あかでめきん(赤出目金)
b,くろでめきん(黒出目金)
c、さんしきでめきん(三色出目金、キャリコ出目金)
鱗性の説明
5,ちようてんがん(頂天眼)、でめらんちう
来歴、全滅、再輸入の話
「でめきん」と「らんちう」との交配であるとの誤りを文献で解説
6,ぢきん(地錦)、ぢわう(地王)、ぢきんぎょ(地金魚)、しゃち
名古屋金魚、愛錦、くじゃく(孔雀)
この品種についても多くのページを割いている。
7,とさきん(土佐金)
この金魚の由來等については何等の資料を持たない。
8,てつをなが(鐵尾長)
- 古くは數十年前に絶滅したという遠州の掛塚に「かけつかのふさを」というのがあってそれから淘汰したものであったらしい。
9,おらんだししがしら(和蘭獅子頭)
- ・・・・・一尺以上にも及ぶものがある、かゝるものは水中に牡丹の花の咲き離れたかの觀がある、・・・・・
由來や品種名について多くのページを要している。
淡路の大鮫卯平
10,わとうない(和唐内)、わりう(和琉)
名前の由來と、著者のの後輩實驗の話。
11,しうきん(秋錦)
- 金魚商秋山吉五郎、豊橋市の戸田善次郎及び岡崎在の杉田久五郎との関係を記述。
箕作佳吉博士の論文とスミス氏の著書のこと。
12,きんらんし(金(魚闌)子)
松原新之助氏と秋山吉五郎氏の命名話
著者の交配實驗の話
金魚秘訣録の圖の話
13,しゆぶきん(朱文金、朱文錦)
秋山吉五郎氏の三種混合の話と松原新之助氏の論文の相違
著者の交配實驗の話
14,キヤリコ
秋山吉五郎氏と米國人フランクリン・バックカード氏の命名の話
モザイク透明鱗はヘテロ接合體
15、アズマニシキ(東錦)
横濱の加藤金藏氏と東京の金魚商高橋鐵次郎氏の命名の話
16,つがるにしき(津輕錦)
澄宮殿下と弘前金魚協會の命名の話
本種の由來について解説
17,ひろにしき(弘錦)、こうきん(弘金)
弘前市の宮本喜三郎氏の交配の話。
18,やまがたきんぎょ(山形金魚)、ふたつおきんぎょ
奥羽、東北地方に廣く普及
19,「わきん」と「ふな」の雑種
母親遺傳の傾向がある
20,「りうきん」と「ふな」の雑種
習性は鮒に似て狂暴
「てつぎょ」との関係を解説
附 てつぎょ
- 大正十一年(1922年)の平和記念東京博覧會に山形縣北村山郡玉野村大字母袋若畑沼産の「てつぎょ」が出品されて廣く世に知られた。
昭和二年、宮城縣加美郡宮崎村字田代岳の魚取沼のものを朴澤三二博士が調査
著者の遺傳の實驗及び前地域の状況から雑種説を肯定する話
21,金魚の進化と其の系統
- 多くの金魚の書に引用されている、有名な系統図を説明
渡瀬庄三郎博士、箕作佳吉博士、スミス氏の系統について解説。
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