「淡水魚からのSOS 106」 森田員正 その2
自序 --淡水魚の危機--
- ・・・・・いくら泣いても魚たちの泪で河川を浄化することは出来ないし直接人間に訴える手段も持たない。
・・・・・これは魚たちの人間に対する無言の警鐘であることを各方面の一人でも多くの方にお伝えし、理解と善処をお願いいたしたいと思います。
霊長目ヒト亜目ヒト科ニホンビト亜科ツリシ属
1982年6月1日 森田員正
本文
1,アカザ
--女性の化身といわれ--
コイ目ナマズ亜目ギギ科アカザ属
- 背部が赤褐色なので「赤背」の意で呼ぶのであろう。
大分県の一部では「アカヂョウチン」、愛媛県小田では「オコンジョ」と呼ぶ。
これは「お紺という女性が、失恋の揚句に入水自殺し、その化身としてアカザとなった」という伝説から。
2,アカメ
--やがて天然記念物に--
スズキ目スズキ亜目アカメ科同属
- 海老ヶ池は浅い池だが、沢山のヒカリメ(現地名)がいて、よく釣れ、特に朝夕によく釣れた。30~40センチのものなら数十尾釣れたし、60センチを越すのも、イナなどを追い、池を跳ねまわっていた。時には海に出ることもあった。池内で繁殖していたらしく稚魚も沢山見られたという。
・・・・・ところが、1935年頃に突然、池のアカメが大量に死んで、以後は再びこの池に見ることは出来なくなった。その原因は池に流入する川に含まれた、汚染物質だった。
3,アジメドジョウ
--清流で珪藻を食べる--
コイ目コイ亜目コイ科ドジョウ亜科シマドジョウ属
- 昔から美味なドジョウとして特別扱いされており、その名も味魚か、ヤマメを山女魚と書く式からすると、味魚女か。
味がよいことについて、その原因は食性にあるようで、珪藻類を常食としている。これはアユと同じ食性である。
秋になると石下の伏流に集まって越冬の準備をするが、その時が繁殖期でもある。このことが本種にとって不幸な結果を招いてきたようである。なぜなら、まとめて漁獲する好機となるからで、このあたりのことは丹羽彌(ヒサシ)氏が淡水魚保護協会の機関誌「淡水魚」四号に詳しく述べている。
4,アブラハヤ
--東西で二種--
コイ目コイ亜目コイ科コイ亜科アブラハヤ属
- 青森から琵琶湖近辺がアブラハヤで、静岡県富士川と日本海側は糸魚川を結ぶ線から西はタカハヤで、琵琶湖から静岡にかけては両種がいることになる。
高野山には弘法大師にまつわる伝説から「ダイシヤキグシノウオ」という呼び名がある。
「紀州魚譜」を書いた宇井鍵蔵氏(鍵は糸編)だったと思うが、理由は「水中にあるアブラハヤを上から見ると暗色の体に小さな背鰭は淡黄色で、あたかも串の跡のように見える」からだそうだ。
5,アブラボテ
--ナワバリを持つタナゴ--
コイ目コイ亜目コイ科タナゴ亜科同属
- 観賞に向く魚だが、困ることはこの魚、産卵期を迎えるとタナゴ類きってのツッパリになることで、ナワバリ意識が非常に強い。
6,アマゴ
--奈良川のアマゴ釣り--
ニシン目サケ亜目サケ科同属
- 天川村には現地名「アメノウオ」の村営孵化場がある。
7,アメマス
--アイヌ伝説の大魚--
ニシン目サケ亜目サケ科イワナ属
- アイヌ語で「トクシッ」とアメマスを呼び、現在も地名として残る、徳舜瞥(トクシュンベツ)、得志内(トクシナイ)、徳志別(トクシベツ)などは、いづれもアイヌ語の「トクシッ(アメマス)ナイ(川)」をそのまま地名にしたもの。
8,アユ
--占いの魚--
ニシン目サケ亜目アユ科同属
- 昭和初期の解禁日には小学校も休校という山村が実際にあり、近年までは大切な行事として残っていた。
そして今では禁止漁法となり、行うことを罪悪視すらする、ヒッカケ漁法も当時としては通常のことであった。そうでなければ女や子供にアユは獲れなかっただろう。
9,アユモドキ
--変わった天然記念物ドジョウ
コイ目コイ亜目コイ科ドジョウ亜科アユモドキ属
- 1977年にネコギギと共に天然記念物に指定された。
肌の感じがアユに似ている「アユに似て非なるもの」としてアユモドキと呼び、岡山では「アユギョウ」といい、これは山口でアユを指す呼び名と同じ。
10,イサザ
--琵琶湖にだけすむ小ハゼ--
スズキ目ハゼ亜目ハゼ科ウキゴリ科(属?)
- イサザと呼ばれる魚は各地各様で、新潟ではシロウオ、木崎湖ではヨシノボリのことをいう。
東海に行くとカタクチイワシの幼魚、更に漁村によってはエビなど甲殻類を指す場合もあって、小さな水生生物の俗称である。
イサザとは細々魚の意のようである。
ウキゴリ属の魚は、ケンカ好きで時に共食いもやるそうで、その他にも飼育面で難しい点も多い。
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