「淡水魚からのSOS 106」 森田員正 その5
36,カワスズメ(ティラピア)
--温泉地に野生化--
スズキ目スズメダイ亜目カワスズメ科
- 1976年正月、山梨県の石和温泉の用水で珍魚が釣れたと、スポーツ紙に報ぜられた。その正体はティラピアであると中村博士によって確かめられた。
私も1973年春、伊豆蓮台寺温泉で釣った。
この魚の本名はティラピア・モダンチカ(※モザンビカ)といい、日本に入ってきたのは1954年とされている。
1962年になると、養殖に有利なティラピア・ニロチカが入り、鹿児島ではティラピア・ジリーという、味では一番と言われる種が養殖され、指宿では野生化しているという。
これらは産地ごとに、新鯛、紀州鯛、織鯛、チカ鯛、イズミ鯛の名で店頭に姿を見せている。
37,カワバタモロコ
--雑魚として扱われる小魚だが--
コイ目コイ亜目コイ科カワバタモロコ属
- 琵琶湖では湖東、湖南の水草の茂った所に多く見られる。
カワバタモロコの名は滋賀県水産試験場場長の川端重五郎氏の名をとったもので、発表報告は田中茂穂博士である。
福岡市周辺にはヒナモロコが混生し、ヒナモロコはゆるい流れを、カワバタモロコは淀みを好む。
38,カワマス
--外来種のイワナ--
ニシン目サケ亜目サケ科イワナ属
- 北米より輸入され、栃木県日光の湯の湖、長野県梓川の明神池にいる。
英名ブルー・トラウト、略してブルーク又はブルック。
39,カワムツ
--狩野川シアン流出の中で--
コイ目コイ亜目コイ科オイカワ属
- 1978年1月14日、伊豆大島近海地震の際、狩野川の支流、持越(モッコ)川に大量のシアンを含む鉱滓が流出した。
これを機にカワムツが殖えたようだ。
40,ギギとその仲間
--地震の予知もする?--
コイ科(※目)ナマズ亜目ギギ科同属
- ギギと近似種のギバチとは分布上面白い位置を占めており、ギギは西日本と四国の吉野川水系、新潟県阿賀野川水系に、一方ギバチは関東東北と九州に分布している。
両者の中間的な型が1977年に天然記念物に指定されたネコギギで、三重県五十鈴川から木曽川水系にだけ見られる。
41,キュウリウオ
--独特の臭気がある--
ニシン目鮭亜目キュウリウオ科
- ワカサギのように陸封などの適応性はないが、シシャモと同じように春から初夏に川を遡り産卵する。
アイヌはパイカ・チェヘ(春の魚)、フエア・ルイ(臭うが強い)とか、これの訛りと思われるヌイラと呼ぶ。
42,キンギョ
--金魚の刺身--
コイ目コイ亜目コイ科フナ属
- 元々はフナの仲間なのだから食べられないことはないが、終戦直後、食糧難の時代にヒゴイが魚屋並べられたのを見たが、売れ行きは良くなかった。
身なりばかり良いが腹の黒い人を「金魚の刺身」と昔はいった。見かけは良いが煮ても焼いても喰えない、ということだろう。
43,キンブナ
--金鮒と銀鮒の判断は難しい--
コイ目コイ亜目コイ科フナ属
- 鱗数より背鰭の棘条数の方が見分けの目安になる。金ブナは13~15本、銀ブナは16~18本、ゲンゴロウブナは17~19本である。
銀ブナは変異種の出現は極めて稀であるが、金ブナはいろいろなフナ属の祖先となっており、金魚、諏訪湖のナガブナ(現地名アカブナ)や琵琶湖のニゴロブナなどがある。
44,ギンブナ
--極めて稀な雄魚--
コイ目コイ亜目コイ科フナ属
- 雄魚が極めて少なく、霞ヶ浦での調査によると1万尾の内に雄魚は1尾もみられなかったと報告された。
少ない理由については、孵化した時点ではかなり存在するがその大部分が死滅する、性転換説、地域説などあるが、不明である。
45,ギンマス(ギンザケ)
--淡水で養殖も--
ニシン目サケ亜目サケ科サケ属
- 1975年、富士山麓の湧水を利用して、1年で300~500gに成長した。価格はニジマスの3倍した。
群馬県では1976年に静岡産の稚魚を育てた結果、2年後に大きいものは2kgに育ち、採卵、孵化にも成功したが奇形が目立った。
1978年には栃木県東古屋湖に釣魚用に試験放流した。
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