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2008年10月12日 (日)

「重要淡水魚とその養殖」 大島正満 その2

自序

  •  ・・・・・即ち我等日本国民は目下全面的栄養失調の危機に瀕しているわけであるが、・・・・・少量で然も充分な栄養価を具備する蛋白資源に依存して栄養を全うすると云う手段に出ててこれを克服することを策せねばならぬ。

    ・・・・・ここに於て我等が指向すべき途は他より何等制限を受けない国内淡水面の開拓による淡水魚の養殖以外には無いことになる。

    ・・・・・食糧難に悩む敗戦国日本は、此際自ら立って、この国難を克服する挙に出なければならない。「門をたたけよ、されば開かれん」である。連合国に叩頭して不足額の輸入を懇願するのみが能ではない。

    ・・・・・然し行くやその基礎を科学の上に置かねばならぬことは云うまでもない。この小著幸に暗を照らす光であり、全国民の栄養失調を救うために資するところあらば幸甚である。

          昭和廿一年春立つ日迎へて  著者識す

緒言

  • 序文に於て述べた通り、我国各地の未利用淡水面を開発して國民の健康上必要欠くべからざる魚族の蕃殖を図ることは、・・・・・急務であるにも拘わらず、・・・・・淡水魚の養殖と云う一大事業を忘却しつつある情勢にある事は、まことに遺憾の極みであると云わねばならぬ。

 以下いろいろな統計資料
 養殖例
  1,滋賀県養鱒組合
  2,滋賀県河川養魚
  3,滋賀県内湖及溜池の養殖
  4,岐阜県武儀郡和良村の養殖
  5,福島県南会津郡荒海村会津山村道場の養殖
  6,山梨県八ヶ岳修練農場

  • ・・・・・この小冊子を以てしては充分にその意を盡し難いが、山村に適する冷水性魚族と一般農村に適する暖水性の魚族との中から最も重要なものを選び、左にその養殖法を叙述して企業の示針とする。

第1章 小鮎とその養殖
 第1節 概説
  鮎の学名、近隣国での分布、語源と意味、習性

 第2節 鮎と小鮎

  • 石川千代松博士が大正3,4年に琵琶湖の小鮎を多摩川に放流し小鮎と河鮎は同じあることが判明した。

 第3節 小鮎の河川放流

  • 小鮎の河川移植が本格的に遂行されるようになったのは、大正13年に京都府下清瀧川と滋賀県下の河川で、大正14年には東京、京都、兵庫、石川で行われた。

 第4節 小鮎の池中養殖

  • 琵琶湖の小鮎は植物性餌料に乏しき水域に生育し、ビタミンCが不足するため充分に生育することが出来ない。
    琵琶湖沿岸の溜池で青菜を混合した配合餌料を与えることによって小鮎がめきめきと肥大することの実験が成功した。

    以下「小鮎の池中飼育法」  滋賀県小鮎配給協会 淡水第一巻第一号の記事を解説。
    1,種苗用小鮎の購入
     滋賀県水産試験場での取引方法や輸送法について
     到着時の蓄養法
     海鮎を魚苗とする方法

    農林省水産試験場技師の中野宗治氏が神奈川県三浦半島の小多湾(※小田和湾)内の川間川河口で成功した。

   2,小鮎の飼育に適する用水

  • 河川水の引用や掘抜井戸の水、濁水は禁物

   3,飼育池の造り方

  • 湧水が出るところや、池底が粘土や腐植土は宜しくない。
    一池の面積は30坪乃至100坪で水深は1尺5寸乃至2尺。
    放養数は坪当たり5、60尾が良い。

   4,餌料

  • 餌料の配合は動物質6割乃至7割、植物質3割乃至4割
    一日の給餌量は体重の十分の一。

   5,飼育中の注意事項

  • 水温、特に盛夏に25度以上にならぬようにする。

  6,取揚げ販売

  • 数日間餌止めし、需給関係を見極める。

-----メモ-----
蕃=バン、ハン、しげ・る
盡=ジン、シン、つ・かす、ことごと・く

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