「金魚の飼い方 附・熱帯魚」 木村四郎 その2
本文
金魚編
第1節 金魚という名前の起源
中国の文献では次のような字が用いられている。
- 黄(虫鼠)魚、(虫鼠)魚、金鱗、赤鱗、盆魚、火魚、錦鱗、丹魚、銀魚、金魚
※()内は一文字だが虫編にねずみのような文字でよくわからない。
日本では大体金魚という字を用いるが、錦魚、銀魚、珊瑚珠魚(さんごじゅ)、玳瑁魚(たいまい)との文献もある。さんごとたいまい(べっこう)は美しく、珍奇で高価であったことからと思われる。
第2節 金魚はいつ頃日本へ来たか
金魚愛玩録の文亀2年と大和本草の元和2年、説がある。
- 欧州方面へは1600から1700年頃と言われている。またアメリカへ渡ったのは1878年頃アンメンという将軍が持っていったのが始めてらしい。
第3節 金魚の流行史
- 徳川2代将軍秀忠の時代に盛んに輸入され、上層階級の愛玩物になり、一般民衆へも普及していった。
元禄7年の町触れで金魚を取り上げ相州(神奈川)藤沢の遊行寺に放した受難時代があった。
明治維新に再度一般にこの趣味が普及し、この時代「らんちゅう」などは現代のような形になり、明治18年には観魚会の第1回品評会が開かれている。
地錦(孔雀)は尾張藩士の間で流行し明治8年には六地蔵尊の境内で品評会が開かれた。
第2次大戦と昭和22年の関東を襲った大水害で再度受難期があった。
昭和25年ごろから急速に復活し、昭和32年においては70%位の復活の状態である。
第4節 金魚に関する文献
江戸時代の文献が13冊、中国の文献が4冊、紹介されている。
第5節 金魚飼育の現況
- 昭和9,13、25~30年の農林省統計で養殖面積(色鯉を含む)と収穫量を掲載。
第6節 金魚の形態
魚網 - 硬骨魚類 - 骨鰾類 - 鯉科
金魚の外形
- 頭部として、ししがしら、ときん(兜巾)、おかめ、の説明
口、眼、胴部・鱗、鰭、消化器、呼吸器、心臓、鰾(うきぶくろ事)、運動について解説。
第7節 金魚の種類
- わきん(和金)
りゅうきん(琉金、琉錦) 鮒尾の長いものは「ふきながし」と呼ぶ。
でめきん(出目金) 明治28年に渡来、支那金とも呼ぶ。
くろでめきん(黒出目金)、あかでめきん(赤出目金)、キャリコ出目金
ちょうてんがん(頂天眼) はじめは出目金のように横を向くが育つにつれ上を向く。他に「でめらんちゅう」、「でめしゅうきん」などがある。
らんちゅう(卵螽、金(魚壽)、蘭(魚壽)) ※魚編に壽で一文字
おおさからんちゅう(大阪らんちゅう) 頭部に肉瘤がない。
なんきん(南京) 出雲地方で飼育される。
オランダししがしら(和蘭獅子頭) 相当に古くから渡来。
ぢきん(地錦) 別名を孔雀地金魚、地王(じおう)、しゃち、名古屋金魚、六鱗、愛金(あいきん)。東京に移入された頃「孔雀」と命名。
「愛錦」は昭和3年の三河金魚競泳会の折りに愛知県特産という意味で命名され、「地王」は愛錦家、牧田屋孫兵衛が十王堂の付近に居住していたからと言われている。
とさきん(土佐金)
つがるにしき(津軽錦) 完全褪色するのに2~3年要する。歴史がある。
しゅうきん(秋金) 「らんちゅう」と「オランダししがしら」の交配淘汰。
やまがたきんぎょ(山形金魚) 「りゅうきん」の「吹き流し」の退化型とも見られる。
しゅぶんきん(朱文金) 「三色出目金」と「わきん」との交配。
キャリコ 「三色出目金」と「りゅうきん」との交配で先代の秋山吉五郎が作った。
あずまにしき(東錦) 一名「キャリコオランダししがしら」で「三色出目金」と「おらんだししがしら」との交配。
ひろにしき(弘錦) 「つがるにしき」と「らんちゅう」との交配。
わとうない(和唐内) 「わきん」と「りゅうきん」の交配。別名「わりゅう(和琉)」
きんらんし(金蘭子) 「わきん」と「らんちゅう」の交配で和金の背びれがないもの。
てつおなが(鉄尾長) 「りゅうきん」と同じだが色が変わらない。
てつぎょ(鉄魚)野生の金魚と言われている。「りゅうきん」と「ふな」で雑種を作ると「てつぎょ」と同様のものが出来る。
コメット
ひぶな(緋鮒)鮒尾の和金。自然産のものがある。
第8節 金魚の習性
- 要約して言うならば「金魚は温暖な溜り水を好む雑食性の淡水魚である」
金魚の生長
理想に近い飼育で1年で
らんちゅう 7~8糎(※cm)
りゅうきん 7糎前後
わきん 10糎前後
でめきん 6糎前後
おらんだししがしら 8~9糎
最も大きな記録として
おらんだししがしら 6年生 32糎
りゅうきん 5年生 29糎
らんちゅう 4年生 13糎
じきん 5年生 18糎
金魚の寿命
- わきん 普通7、8年で大体10年位、条件が適当であれば20年以上
らんちゅう 精々6、7年。昔は17、18年から20年も生きた
おらんだししがしら 奈良県下で22年、東京で25年の記録がある。
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