「池や川の植物研究」 その2
表紙
時代的に右から左へ書名、著者名、叢書名が書いてある。
叢書出版にあたり
この文書は時代が良く表しているので前半部を紹介します。
- 少國民の皆様、私達は今度この「少國民理科の研究叢書」をそれぞれの専門の先生に書いていただいて、皆様に読んでいただくことになりました。我らの祖国日本が今世界でどういう立場にいるかということは、皆様も学校の先生から伺ってよく御存知のことと思います。
これからの日本人は一人残らず皆科学のことをよく知ってそれを実地に行わなければならないのです。それには子供の時から一人残らず理科を勉強する事が最も大切で、これがやがて君に忠義をつくし國に報ゆる一つの道であります。
以下略
監修者 理学博士 福井玉夫 (※東京文理大教授)
東京高等師範学校 教授 内藤卯三郎
理学博士 藤本治義 (※東京文理大教授)
監修者はみな学校の先生になる大学の教授なのです。
はしがき
こちらも時代がでている最後の所を書いておきます。
- 自然に生えているありさまや、その植物の性質・形などの正しい観察と忍耐強い努力が大切です。
皆さん、元気で理科の勉強をして、立派な皇國民となって、お國の為に働きませう。
昭和十六年夏至
東京都杉並区荻窪の自宅にて
口絵
- 水彩風のイラストで沈水植物から挺水植物までが水辺を切り取ったように描いてあります。イラストに番号で書いてあり、下に植物名が記述してあります。
ガマ、イ、ハス、オモダカ、コウホネ、スイレン、ジュンサイ、ヒシ、ヒルムシロ、ウキクサ、サンショウモ、タヌキモ、クロモ、エビモ、ホザキノフサモ、マツモ、セキショウモ
本文 ※気になったところをメモ程度に記述しています。
ウキクサの生活
- 葉に見えるのは茎で葉状茎(ようじょうけい)又は葉状体という。根の先の膨らんだところ、はねぶくろ(根嚢)という。
花は10月ごろ葉状体の間にうす緑色のものが咲くが、小さすぎて普通は見えない。
増え方は通常、葉状体が2、3日ごとにわかれて増える。
ヒシとトチカガミの観察帖
- ヒシの種子は棘と棘の間の凹んだところから5月の始め頃芽を出す。
トチカガミの茎は花をつける茎の他はまっすぐ立ち上がらない。雌花が咲く株と雄花が咲く株とは異なっている。
浮水植物
- アサザの葉が若い頃は食べられるのでハナジュンサイとも呼ばれる。
- デンジソウはヨツバウキクサとかカタバミモなどと呼ばれる。夏の終わり頃、葉柄のもとのところに短い枝を出して、その先に少嚢をつける。こらが花にあたり中に胞子が出来る。
- ヒンジモ(サンカクナ)これは「品」とうい字に似たように葉状体が連なるからである。
- アオウキクサとウキクサの違いはアオウキクサには根が1本しかない事である。
花の咲かない浮草
- アカウキクサ
ウキクサと違うところは花が決して咲かない。大きくなり切り離れて殖えるか、葉の間に子嚢が出来、その中に胞子をたくさん包んでいる。浮き草の中でも繁殖力が強い。
- サンショウモも花が咲かない。葉が2枚に見えるが、根に見える部分も假根と言う葉である。秋頃、假根の根元に小枝が出てその先に子嚢を付ける。
浮かぶコケ(苔)
- ウキゴケ(イチョウウキゴケ)は水が無くなると假根がたくさん出て地中にのばす。
このほかにカズノゴケやイチョウモがある。
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