「熱帯魚の飼育と鑑賞」 吉津良恭 その2
箱は文字が書かれている箇所はマリンブルーだったと思われ、出版社名がアルスではなくARSと表記されています。
表紙は同じくマリンブルー(褪色していない)に銀でエンゼルフッシュが描いてあると言うか、凹凸が少しあって変わった作りになっています。また、背表紙も書名部は臙脂に金文字、扉と口絵の前にはごく薄いグラシン紙が挟んであり、紙質も厚く全体的に豪華な作りの本です。
口絵 各写真は片面印刷です。
- 最初の3枚は著者?の温室のようです。鉄骨づくりで天にはガラスがはめ込まれ、かなりの規模のように見えます。
また、所狭しと植物が置かれているので、園芸家らしいと思います。水槽はガラスバット水槽3段でこの規模もちょっとしたSHOP並だと思います。
- 4ページ目はエンゼル・フィッシュ(ハーフ・ムーン)の白黒写真ですが、かっこ書きの意味は良くわかりません。
- 5ページ目は絵画のような白黒のイラストでラスボラ・ヘテロモルファ、アンバシア・ランガ、バディス・バディス、スカトファガス・アルガスが一枚の絵に描かれています。アンバシアの絵は海産のタナゴみたいで、今で言う何なのか良くわかりません。バディスも説明が書いてあるから解りますが、メバルみたいです。
- 6ページ目も同じようなイラストです。パラダイス・フイッシュ、ストリップド・ダニオ、ブルー・ダニオ、バルブス・コンクニアス、バルブス・オリゴレプス。ブルー・ダニオはゼブラ・ダニオの事ですが、ストリップドはジャイアント・ダニオかもしれません。また、コンクニアスはロージー・バルブかな。後者2種は自信ないです。
- 7ページ目はモリエニシア・ラティピンア、リボンテールド・パンヤックス、ベタ・カンボジア、ベタ・スプレンデンス。リボンテールは絵を見る限り卵目のライアテールの事だと思われます。
- 8ページ目は白黒写真で「総硝子タンクと植え込み準備」とタイトルが付されています。
序
- 現代風に言うと「最近熱帯魚を集める人が多くなり、無経験な自分たち専門家に質問する人が多くなってきた。そこで熱帯魚の指針たるべき良書が出版され喜ばしいことである。日本人が金魚において珍品種を作出してきたように、熱帯魚も珍品種が作り出される事を希望する。」 京都市立記念動物園にて 川村多實二 識
序言
- ここも現代風に「園芸に携わる者であるが、水草を集めながら動きのある熱帯魚を余興として飼養し始めたら色彩美や習性が面白くなった。一部には買いあさっている人もいるようだが、我々はFish Fans として愛育したいものである。最近1,2の類書が出版されたが公務の合間を使って最新の本を著し熱帯魚界の発展に貢献できれば幸いである。」その後、川村氏(東大教授で園長)、宮地傳三郎(当時はまだ京大講師)に謝意を述べている。
類書とは鷹司氏と同じくアルスから出版された雨宮氏の本を指していると思われる。
- さらに興味深いのは、この本執筆に当たり熱帯魚の収集に、侯爵 松平康昌、斎藤省三、吉井千代田に謝意を表している。侯爵の名が出るあたり熱帯魚の趣味が当時いかに上流社会の趣味であったかがわかる一文である。
主なる参考文献 10冊を参考文献として書名と著者が書いてある。
熱帯魚 鷹司信敬
Goldfish Varieties and Tropical Aquarium Fishes. Innes, Wm. T.
Das Modern Aquarium. Innes, Wm. T.
Tropical Toy Fishes. Bade, E.
Brehms' Tierleben (Vol.3 Fische) Brehm, Alfred.
Die Susswasserfische. Bade,M.
Praktikum der Fischkrankheiteh. Plehn, M.
Das Leben der Binnengewasser. Willer, A.
Freshwater Fishes of India Beavan, R
当時から米国ばかりでなくドイツかオランダ?に良い本があった証かな。インネスぐらいしか知りません。
凡例 現代風に
淡水産熱帯魚だけ
多くの図版を入れた
初心者を対象に精密な図版とした
熱帯魚と言いながらも水草も20種入れた
温度は摂氏、尺度はミリメートル
便利なように和名と洋名の索引を作りました
熱帯魚界の全容のため熱帯魚一覧表をつけました
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