「熱帯魚の飼育と鑑賞」 吉津良恭 その8
第5章 水草のページ
- 第1節 水草の効用
満足な衣(水)食(生餌)住(水草)無しには魚は絶対育たないと断言して差し支えない。
- 第2節 水草と水槽(容器)との関係
両側に水草を配し、残り半分は透明な水を望める余地を有する程度が良い。
低いタンクを使う際は、サジタリア・スブラータ、エロデア、ヘヤー・グラス、オッテリア(みづおほばこ)など適当な物を選ぶ。
※ ミズオオバコではなくズをヅで記述している。誤植かと思ったが、次の節でも同じ記述をしているので意図的である。
- 第3節 水草の作り方要領
観賞効果と清潔の点では粗めの洗い砂がいいが、泥植えをせねばならない種類は鉢を用い表土を砂で抑える。
水草は亦非常に地熱の高いことを欲するので、コイル等を根部に配線すれば最も旺んな成長を遂げる。
※ この方式が一般に広まったのは、デナリー社が日本に進出してからだと思う。昭和初期の飼育書に記述されていたのにその後どうして忘れ去られたのか。恐らくその後の飼育書が熱帯魚専門家(主に牧野信司)の手によるものであったため、主体が魚体本位にシフトしたためと考えられる。当然それは当時の新着魚ラッシュがそうさせた物だろうが。
- 第4節 一般的注意
近来百貨店などで、ミヅオウバコ、タヌキモ、牡丹浮草、ムジナモのような種類をアクアリウム用水草として見かけるのであるが、これらは池或いは鉢栽として観賞する目的のために売られているのであって、直ちにアクアリウムに用いる事は出来ない。
冬眠期に入る種類ミヅヒキモ、トチカガミ、ヒロハノエビモは枯れるが、宿根草だけにそのままで良い。一年草のミヅオウバコは枯れたら取り去る。
- 第5節 アクアリウム用水草について
※ここで水草各種を紹介、説明している。解説13種、白黒写真8種、イラスト4種(インネスからの引用)。写→白黒写真有り、イ→イラスト有りを示す。
サジタリア・サビュラータ Sagitaria subulata (写)
百貨店で1本5銭内外。ニューヨークからアラバマの海岸地で採取されたもので、米国では謝ってサジタリア・プシラ(Sagitaria pusilla)として知られていたものである。
サジタリア・ナタンス Sagitaria natans (写)
リボン・アローヘッドとして知られる。酸素供給量が多いので好まれるが、繁殖の遅いのが欠点といえよう。砂植、浅植がいい。
サジタリア・シネンシス Sagitaria sinensis (イ)
英名ブロードリーフ・サジタリア。大型タンクに用とされているが、成長緩慢と繁殖率の多くないことが欠点。ジャイアント・サジタリアとして評判高く、愛隣家の垂涎である。
バリスネリア・スパイラリス valisneria spiralis (写)
英名テープ・グラス、イール・グラス、チャンネル・グラス
セキショウモとして知られ別名ヒラモ或いは滋賀県地方ではオホイトモとも呼ばれる。
イタリー原産の物は昨今米国で大量に繁殖が試みられている。
この植物の愉快な習性は雌雄異株で、雌花は螺旋状の茎を水面に上げコップ状の白花をつける。雄花は根株に咲き、花粉が成熟すると水面に浮き上がり受精する。
ジャイアント・バリスネリア (イ)
南方アメリカ地方で旺んに栽培が試みられているが、目下本邦ではその姿に接するに至らない。
クリプトコリネ Cryptocoryne SP (イ)
本種中に20~30種あるようだが、現在我が国では葉の広いものと、狭い品種の2種が栽培せられている。植え方は土植とし、表面を砂で覆っておくと見事な育成を見る。
繁殖は走り根(ランナー)による。1株1円程度である。
将来最も重要な水草として歓迎を受ける種類である。
ウォーター・ファーン Ceratopteris pteridoides (写)
最近タンク用として紹介された水草であり、普通20cm四方に成長するが、プールでは優に30cmになる。フローテング・モッスの別名もあり、水槽中の一異彩たるを失わない。養成中日光の直射に逢わせぬ事が大切である。
最近東京方面の愛好家において、この水草がタヌキモ、ムジナモと同様水中に炭酸ガスを発生し、魚の生育に不適だとの意見がある。しかし米国の専門書には反対の意見が開陳せられ、却って良い酸素供給者として挙げている位である。
※ 写真を見る限り今で言うネグロ・ウォーター・ファンの事である。自分も持っているが150の水槽でも可成り大きくなります。しかし戸外ではうまく育たないのは前述の直射日光が良くないのかもしれない。
カボンバ Cabomba Caroliniana (写)
泥深い戸外では良く発達するが、タンク内では徒長し、魚の食害や動きで葉が四散するので、仔魚用タンクに植えられて優れた結果を得る。
別名はワシントン・グラス、ウォーター・シェールド(Shield)
この種の変種に茎が赤みを帯びたC.rosaefoliaがあるが、未だ日本に紹介されたのを聞かない。
まつも Ceratophyllum demersum (写)
キンギョモと混淆され易く、関東地方の池沼に自生するものである。注意点としてはアヲミドロの着生したものがある。関西地方において将来推奨せられる種類である。
きんぎょも Myriophyllum spicatum (写)
フサモ、クジャクモの異名があり、単に藻として取り扱われる。
アナキャリス Elodea canadensis (イ)
昨今の愛好家において添景物として役立つとしているが、西洋では非常に好評あるものとして推奨を受けている種である。ただ、多量の陽光を必要とする。
デッチ・モス Ditch-Moss
ウォーター・ペスト Water Pest
ウォーター・タイム Water-Thyme
パビントン・カース Babbingtons Curss
上記のような好ましくない異名は、成長が早いためである。
やなぎも Potamogeton oxyphyllus (写)
別名ササバモと称せられることもある。繁茂が少ないので最初から相当賑やかに砂に植え込む必要がある。
他に野生種として
みずきんばい Jussia aerepens
うきごけ Riccia fluitans ←※ リシア
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