「熱帯魚の飼育と鑑賞」 吉津良恭 その10
第6章 熱帯魚のページ
※ この章で各魚種の解説を行っています。本の名称は「原色図解」となっていますが、写真はなく、相当できの良いイラストが1ページに1種載せてあります。特に色使いは見事で、通常良くある毒々しさが有りません。本物の魚体が忠実に再現されていると思います。
淡水産の愛玩魚は全世界を通じて100種位に止まる。しかし我が国では目下漸く其の半数に達せんとする極めて初歩時代を辿っている現状にある。
※ 昭和9年の時点の状況です。
この熱帯魚は是非仔を引かねば興味の半数を殺がれる所以と、増殖無しには趣味の向上を期すことが出来ない。
- 第1節 メダカ科 11種が紹介されている。
胎生の魚が多くいるが、正しい意味での胎生でないので、ビビパラス(Viviparous)又はリーブ・ブリーデング・バラエティー(Live Breeding Variety)と呼ばれている。
器具のイラストとしてインネスから引用し
グラス・バー・ブリーデング・ケージ(Glass-Bar Breeding Cage)成魚を入れる硝子棒の檻とアクアリウム・トラップこれは今で言う産卵箱が載せてある。
魚種名を列挙してみると、
レインボゥ・フィッシュ Lebistes reteculatus グッピーの事。
イラストは原種のオスで、まだ今のように尾が開いていない。
ムーン・フィッシュ Platypoecilus maculatus
体色によって6種に分けてある。
ブルー・ムーン 背部が青藍色で金属光沢に富む。
ブラック・ムーン 背部が灰褐色、腹から尾の部分が黒。
ゴールド・ムーン 橙黄色であるが、臀鰭に稍赤みを帯び、尾の基部に黒の大斑がある。
ピューア・ゴールド・ムーン 斑点がなく全体は文字通りの濃い黄色である。
レッド・ムーン 淡い朱紅色を呈し、尾のところから腹部にかけて黒色の胡麻絞りがある。
ピューア・レッド・ムーン 最近米国から輸入された。前種のように黒点を認めない。
以上の他にサラサ・ムーンと言う種類があるが、これは我が国のレッド・ムーンとブラック・ムーンとの交媒種で赤地にブルー・ムーンの持つ藍紫色光を含み、且つ体全体に黒点がサラサ模様風に現れた色彩を持つ。
ホワイト・ムーンという純白ではないが、白味の多い種類があるが、主として一つの変異で起こるものである。
イラストはブルー、ピューア・レッド、レッド、ゴールドの4種が載せてある。ピューア・レッドが今で言うレッド・プラティでレッドはブラック・ペッパー・プラティ(あるいはサラサ)のようだ。
セルフィン Molienisia latipinna セルフィン・モーリーの事
この種は未だ輸入を見ない。本種に最も酷似するモリエニシア・ベリフェラ(M.velifera)があり、純粋なものがあるあどうかは疑問であるが、2、3の愛好家が飼育している。
ブラック・モリエニシア Molienisia sphenops ブッラク・モーリーの事
ソード・テール Xiphophorus helleri
雄は水色地に背中が緑色で、脇腹に沿って1本と背鰭の中央に紅色の鮮やかな線を現す。この種の黄色のものを特にオレンヂ・ソード・テール、半月形黒剣のものはクレセント・ソード・テールといって区別している。
雄1回の採精は優に4回の胎生に役立つと言われる。オレンヂ・ソード・テールはその尾鰭に黒点があるものが珍重される。
レッド・ヘレリ Platypoecilus maculatus × Xiphophorus helleri
プラティとソード・テールの交媒種。
この他にブッラク・ヘレリ、レッド・ハイブリット・ヘレリ、サラサ・ヘレリ、ブルー・ヘレリがある。いづれも雄には尾に短い剣をもっているが、lこれを欠くこともある。
イラストはレッド・ハイブリット・ヘレリ(これはサラサ・ソードの尾が短い物)とレッド・ヘレリ(レッド・ソードの雌のよう体型)
トップ・ミノー Gambusia affinis
殆どメダカの恰好で雄は腹に点があり、雌はレインボゥ・フィッシュの雌を思わせる。胎生で高温でないと産まない。この種の耐寒性の一種は最近我が国においても放飼が行われた。
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